2009年02月28日

第1回伝統構法を考える勉強会報告(4)・・・実験・測定の例(建築研究所の実験・E-ディフェンスの実験)

2008_0129_044s.jpg

■実験・測定の例 
 次に実験例の話に移りましょうか。静的な加力実験、比較的最近では、森林総研がつくばの民家で引き倒しまで実験しています。同じつくばなので私が昔やった実験の建物とよく似ています。最大荷重でやはり5tくらいです。彼らは頑張って最後は本当にぐしゃっと倒壊するまで引っ張りました。これは気を付けないと変位計を壊したりするので、実験する方としては結構大変です。
本当に倒壊する時の変形量はだいたい1/4ぐらいです。物によって違いますが、1/5〜1/3くらいの間です。
 壁とか柱の曲げを単体で実験すると最大耐力は1/30くらいで出たりしますが、実大でやると、このポイントはもっと大きな変形量のところで出てきます。この場合ですと、1/10近いところで最大荷重が出ています。 同じ様な実験を山口県で藤田香織先生などがやられています。これも1/30くらいのところで最大耐力が出てあとは下がる。
東三河でも実験がされています。
  
2009_0228_zu17.jpg
 図17:旧鈴木家
2009_0228_zu18.jpg
 図18:旧井岡家
 私が東京理科大学にいた頃、理科大は神楽坂なので実験場所が狭く、なかなか実験をさせてくれないので、だったら外に出かけようと、常時微動計を買いました。これは速度計ですが、非常に感度の高いものです。地面の交通振動や風の影響などで、建物はミクロン単位でいつも揺れています。川崎市に日本民家園というのがありますが、そこの建物に微動計をセットして常時微動を拾って、どういう振動を起こすかを測定しようと、民家園の民家を片っ端から計りました。
その結果の一部ですが、旧鈴木家、梁間方向の計算値で、1・88Hz、こちらが実測値で3・15Hz、1秒間に3・15回揺れます。この時も建物の色々な場所に微動計を置いて、建物全体がどう揺れているかを見ましたが、やはり水平構面が柔らかいというのがよくわかる、そういう複雑な揺れ方をします。
 町屋になると梁間方向と桁行方向でがらっと数字が違います。梁間方向(長手方向)にはとにかく壁が多いので、こちらは堅い。ただ桁行に揺らされると、非常に柔らかい。感覚的にその通りですが、揺れやすい順番としては桁行方向に揺れるのが一番揺れやすく、次に梁間方向に揺れやすいかと思うと、もっと揺れやすいのは実はねじれ振動です。先ほどの民家常時微動測定結果の表の左側の計算値は、土壁と垂れ壁の付いている柱の曲げ抵抗を計算して固有振動数がいくらになるかを出した物で、表の右側が実測値です。それを全部まとめて、横軸が計算値で縦軸が実測値のグラフに、プロットすると、実測値と計算値がだいたい合っているので、モデル化も悪くはなかったと思います。ただ数字の絶対量は2倍近く違っています。違っている理由は、微少振動と変形のどのくらいの領域で話をしているかなので、それはちょっとしょうがないのかなと思います。
力と変形の関係がモデル化した計算式で出てきますので、グラフに描いてみると、一気に耐力が高くなっているのは、町屋の梁間方向です。町屋の桁行方向や農家型の住宅などは、だいたい自重の0.2倍くらいで頭打ち、そこが最大耐力になるというような結果が出ます。これは計算結果なので実際どのくらいになるかはわかりませんが、その位の感触です。
2009_0228_zu19.jpg2009_0228_zu20.jpg
 図19:固有振動数の計算値と実測地の比較 図20:民家の荷重変形関係の予測

2009_0228_ph0304.jpg これは、大工育成塾の卒業制作建物を建研の敷地に建てて、それを引っ張る実験です。ここで何が言いたいかというと、先ほどの水平構面の変形も含めたモデルが結構使えそうだという話です。この実験の時は2階床レベルにH型鋼を流して、建物全体をほぼ同じ変形になるように加力をするパターンと、それからこのH型鋼を切り離して、建物右側2構面だけ、建物左側2構面だけをそれぞれ別々に加力する方法で加力をしました。最後は全体を押して通し柱も折れ、土壁もばちばち落ちるところまで、下の変形で1/5くらいまで、加力をしていますが、それで力と変形の関係がこのように出ました。最後は50pまで引っ張っても、まだ耐力が残っていたので、そう言う意味ではびっくりしました。

実験値のグラフに計算値のラインを描き足してありますが、それは、耐震診断などで使われている土塗り壁を足し算していき、それに量としてはそんなに多くないのですが、通し柱の効果をさらに足し算して出しました。計算と実験がそこそこ合うという結果になっています。これも土壁のたくさん入っている建物なので、特にそういう傾向にあると思いますが、基本は土壁を足し算しただけで結構合います。

 これは上から見たときの2階の小屋、2階の床の変形状態の実験結果とモデルを使った解析結果です。変形の状態はかなり似通って出てきているというのは解りますが、右を引っ張ると、左はほとんど動かない、つまり水平構面として右に入った力を、左に伝える役割というのはほとんどしていない。これは杉の厚板を釘打ちしたものですが、その位のものだと、水平構面として力を流す役割というのは、十分には無いことが解りました。
2009_0228_zu21.jpg
 図21:疑似三次元モデル



2009_0228_zu22.jpg
図22:大工育成塾卒業制作建物実験結果
2009_0228_zu23.jpg
  図23:実験結果と疑似三次元モデルとの照合


■ 振動実験
●建築研究所の実験
2008_0122_003s.jpg
 写真5:建築研究所の構面振動実験試験体写真
2009_0228_zu24.jpg
 図24:試験体図
 振動実験の話に入りたいと思います。建物の要素の働きがずいぶん解ってきましたし、それが三次元的にどのように組合わされて、建物のモデルになるかというのも、私の頭の中ではかなり出来ているつもりです。
しかし、静的な加力試験が多いので、実際振動実験をやってみたいというのは、もともとあったのですが、建築研究所もようやくそういうものに予算が付くようになり、3年くらいでプロジェクトをやっていました。これは昨年の構面の実験です。試験体としては垂れ壁が付いて、差し鴨居が入っている試験体で、全長は柱芯々5.46mです。柱の太さが問題ですが、150角を1構面3本で、全く同じ構面が2枚、合計6本の柱が並んでいる試験体を使い、これを揺らすとどうなるか、ただ揺らすのではなく、足下を止めた場合と止めない場合の二つの実験をしました。
止めない場合、滑ることは予想されたので、柱が礎石を踏み外して落ちないことが、安全な建物を設計して造るための、ひとつの条件だということで、長さ1mの礎石を用意しました。現実的に、伝統構法には滅多に無いと思いますが、1mの礎石を用意して、それでも本当に滑り落ちないか不安でしたが、滑るなら滑ってみろという試験体が一つです。

 こういうのは足元で摩擦がどのくらい出ているかが、必ず後で問題、疑問になりますので、足下、礎石の下に荷重計を置いています。この荷重計は、鉛直荷重と水平力を同時に計れるすぐれもので、鉛直荷重がどのくらいかかっていて、滑ったときの摩擦力がどのくらいあるかを直接計れる、そういう装置を用意しています。ただ、この荷重計が残念ながら建研には6台しかなくて、特注品なので結構高いんです。実験の前には荷重計に実際に荷重を掛けて、正しい値が出るかどうかを確認する校正という作業をしますが、この6台を校正する費用の見積もりを取ったら100万円を超えていました。なけなしのお金をはたいて校正しましたが、校正するだけでその位の費用がかかるものなんです。6台しかないのですが、さすがにこの1mの礎石を1台で支えるのは無理なので、2台ずつで支えると、片方の構面だけしか計れないので、1つの構面だけに荷重計を置いて、もう1つの構面は荷重計無しで、ただ礎石の高さを合わせるための台を作って乗せました。

 それからもう一つは、足元を止めるので、足固めからアンカーボルトを下に引っ張って足固めを止めます。ボルトは16ミリを使いましたが、あるトルクで締めていくとだいたい1本あたり、500kgくらいかかります。その足元の摩擦力だけで、ほとんど滑らなくなります。
揺らした波はJMA神戸、兵庫県南部地震の時に神戸海洋気象台というところで、取られた地震波のNS方向成分、これはよく実験で使われる波です。これをいきなり100%入れるのは怖かったので25%、50%それから100%、間にBCJレベル2、これは人工地震波で、超高層などを解析するときにベースになる波です。ただこれは建物が建つ地盤により、本当は増幅しなければいけないのですが、そういう地盤を特定するのもやっかいなので、400ガルにまで加速度が上がるようにしています。BCJレベル2は、元々355ガル位の波ですが、1〜2割アップしています。400ガルに基準化しています。そのような波を使っていますから、建築基準法で想定しているくらいの波だといって良いでしょう。

2009_0228_zu25.jpg
 図25:実験結果最大応答変位 
 実験の結果です。柱脚を固定している方は、ほとんど柱脚のスベリは無い。BCJレベル2の時はだいたい100ミリの変形が出ています。両側に100ミリずつ揺れる。傾きで言うと1/30くらいなので、設計としては良いところへ納まったかなというところです。特に大きな損傷もありませんでした。神戸の100%を入れると16〜17pの応答があって、そろそろ土壁にひび割れが入るようなことがありましたが15pの柱を使っていると、柱が折れることはありませんでした。
 ここまでの試験は重りを2t載せて、自重プラスおもりで試験体の重量は3.5tだったんですが、それで終わるのはしゃくなので、重りを3tに増やしました。自重プラスおもりで4.5t。設計上はもうアウトに近いですが、そういう状態で揺らして、本当に壊れるときはどう壊れるかというのをやりました。
見事に壊れましたが、柱はとうとう折れませんでした。1本だけほんのかすかな曲げひび割れが入りましたが、他の柱も健全で、土塗り壁がばさばさ落ちる、先ほどの破壊モードで言うと、柱が折れるか垂れ壁が壊れるかのどちらかといえば、垂れ壁が壊れる方のモードでした。というのが、去年の実験でした。
 足元を止めない方に、JMA神戸を入れたときですが、足元は結構滑ります。足下が滑った結果ということもあるのですが、冒頭の私の話とはずいぶん違うと思われるかもしれませんが、上物の損傷はあまり出ていません。足元を止めた場合のJMA神戸100%では、ちょうど縦貫が入っているところに少しひび割れが入りました。縦貫の所は土が薄いので、そういうところからひび割れが入りますが、その程度の損傷に終わりました。
最後に重りを真ん中にも載せて。3tにして揺らしました。
柱の方が強かったので、柱はほとんど曲がらずにまっすぐで、土壁の方がくずれていくところがありました。
 振動実験だけでは、細かい挙動が解らないので、静的な加力もやっています。静的加力の時は振動実験の時に得られた変形の計測データに合わせて、その通りに試験体を動かしています。動きのタイミングはちょっとずれているかもしれませんが、動き方は一緒です。若干、静的加力の方が土壁の落ち方が激しいですが、土壁の方が壊れていく破壊パターンや、全体の壊れ方というのは、静的な加力でもよく再現できる。逆に言えば静的実験をやっていればかなりの所まで、振動実験の予測はできるはずということが解ります。
 先ほど足元が滑るのがありましたが、このときの摩擦係数を計っていますので、それを今度は、計算で追いかけようと思えばかなりの所まで出来ます。これも計算のレベルはいろいろあって、建研の中でもすごい計算の好きな人がいて、部材1本1本をモデルに置いて、摩擦係数も静止摩擦係数から動摩擦係数に移行するところまで全部モデルに入れたりして、一生懸命やっている人もいますが、私の方はちょっと手を抜いて、いわゆる串団子モデルという、建物の1階を1つの点で表してしまうという単純なモデルで、時刻歴の応答計算をしました。

 ある瞬間(この場合だと1/5000秒)の力の釣り合いというのは、慣性力も含めての力の釣り合い式が立てられます。その時の試験体の速度や状態がどうなっているかをインプットすると、その1/5000秒後にはどうなるかが予測できます。さらに1/5000秒経ったところで、また地面はどう揺れていて、その状態がどうなっているかを入れると、次の1/5000秒が予測できる。それをどんどん繰り返していくと、何十秒間かの揺れ方がどうなるかが解析できるというのが時刻歴応答計算です。

 それをこのように、2つの点にしか質量がないというような単純なモデルで、足元が滑るのをどこまで再現できるかやってみました。神戸の50%を入れたときの上が実験値で下が計算値ですが、絶対量は必ずしも合ってはいませんが、かなり似た動き方をしているところまでは行ってます。少し上物の剛性を固めに評価し過ぎたので、ややずれていますが、ぴゅっと動き出す瞬間などは、それなりにいい感じに似ています。このくらいの解析まではそんなに難しいことをやらなくても出来るところまでは来ています。
 ただ、これは限界耐力計算の元になっている等価線形化法で予測をしたら、見事にはずれました。何故はずれたかの理由は、私の推測ですが、足元が滑るときは、行ったり戻ったり、ぐるぐるループを描かないんです。そうするとそこで発生する減衰はあまり大きくは無いんですが、等価線形化法では、ぐるぐるまわっているものという想定で減衰を評価してしまうので、それをそのまま当てはめると変形量が小さくなりすぎて、予想値が小さくなり過ぎてしまうこということがあります。そこの減衰の取り方を補正すれば、もう少し良い予想はできるかなという、感じはします。それはまだやっていませんが、そういう等価線形化法で予想も出来るのかなあという感じもしないでもない、というところまで来ています。正直なところ、これを設計法にまで持っていくのはまだまだ大変だなという感じはしています。

 建研の今年の実験も御紹介してしまいましょう。その2を、2月の10日と18日に加振しました。今年は150角の柱を細くして、なんとか柱が折れるというモードを作り出したかったというのがあります。正直な事を言いますと、去年も柱が折れるだろうという予想をしていました。結果として折れなくて垂れ壁の破壊モードになりましたが、あとあと考えると、耐震診断の、柱が折れるか折れないかという、柱一本あたりの耐力を出す簡単な方法をご説明しましたが、あの中に要修正個所があるんです。その修正をかけると確かに去年のものは壁の破壊モードで決まるなと最近気が付きました。今年はそれでやり直して、柱が折れるか垂れ壁が壊れるかちょうど良い勝負というくらいの試験体にしました。あとは柱に使っている杉材の品質などによっても変わりますので、その辺は微妙なところではあるんです。試験体は全く去年と一緒で、柱の寸法だけが135になった。また、垂れ壁のせいが5pほど大きくなっています。入力も一緒で、JMA神戸を25%から順に入れました。その結果ですが、足元を固定した場合,BCJレベル2で126oに納まって、神戸100%を入れたら450o、倒壊防止のワイヤーが効いたので、実質倒壊です。

 柱脚を固定しない方は、BCJレベル2で86o、実は、去年は足元を止めた時と、止めない時の上部構造の変形の差はもっと大きかったんですが、今年はだいぶ近づいてきました。建物の耐力が小さくなると、近づくだろうと予想していました。JMA神戸100%を入れるとこちらは101oですから、小さい応答に納まっています。上物の傾きは、1/30くらいに納まっているので、これも結果としては、柱脚を固定しない方が上物の損傷は小さいっていう結果にはなっています。柱脚を固定した方で、柱の曲げ破壊がBCJレベル2の段階で4本、JMA神戸で残りも含めて全部曲げ破壊をするという結果になりました。
 足元が動く方ですが、去年に比べるとだいぶ上物が柔らかいなという感じはしますが、それでもやっぱり足元は動きました。これはどれだけ重りを載せるかとも関係して来ますが、固有振動数で2・5Hzくらいありましたので、それなりに堅さがあるだろうと思いました。それから足元を止めた方です。普通はワイヤーがたるんでいるんですが、瞬間ピッと張ります。だから実験としては想定している安全の範囲を超えたので、ワイヤーが効きました。
柱の曲げ破壊で決まりましたので、土壁の損傷はほとんど無しです。柱が勝つか垂れ壁が勝つかは、今、計算式を一生懸命組み立てて、設計に持っていこうかなと考えているところです。

●E-ディフェンスの実験
 E-ディフェンスの方ですが、こちらはご存知のように、国交省の方で予算取りをして、3年計画で設計法をなんとか固めようというプロジェクトの中で行われた実験です。
その設計法の為に振動実験をという説明もなされてはいますが、私の考えでは、振動実験をやったから設計法が出来るというものでは決してありません。あれだけの大がかりな振動実験というのは計算モデルと実験結果がどこまで合うかという、そういう検証に使う目的でやる実験であって、実大振動実験をいくらやったからと言って設計をどのようにしたらよいかがわかるというものではないことをご理解いただきたいです。
設計法を得るためには、もっと数多くの色々なパターンの要素実験をやって、計算と逐一照合するような、地道な研究を積み重ねて行かなくてはいけません。

2008_1204_0197s.jpg
 A棟
2008_1128_0163s.jpg
 B棟
 E-ディフェンスの実験は、試験体としてはA棟・B棟2つあります。A棟については、部材断面が大きな地方型、滋賀の方が設計されて、主要な柱は通し柱、構面の交点は合計12本の通し柱で、外周の通し柱は150角、中央の2本は210角です。この実験で2つの試験体に共通していますが、「足元は滑らない、しかし浮き上がりは許す。」そういう思想で作られています。
ただ、柱が浮き上がったら、建物全体をどのように解いたら良いかというと大変難しいです。私が先ほど出した、7×7のマトリックスを解けばできるという簡単なモデルがありましたが、あれでは解けません。何故解けないかというと、足元がどれだけ浮き上がるかは、その時の状況によって変わります。足元がどれだけ浮き上がるかによって、その構面の耐力が変わってきます。つまりモデルを作る上で、ある構面の力と変形の関係はこうですというのを最初から与えることが出来なくて、足元が浮き上がるか浮き上がらないか、浮き上がるとしたらどれくらい浮き上がるかという答えが出てきて、やっと耐力が解る。あらかじめモデルの中に力と変形の関係を書き込んでおくことが出来ないので、浮き上がりを含めて部材1本ずつのモデルを作って、三次元で解かないと厳密な解は出てきません。事前解析に何人かがトライしましたが、間に合ったのは一人だけです。それも部材1本ずつをモデル化して、建研のそういうのが好きな人なんですが、彼の予測だけは何とか間に合いましたが、浮き上がるだけで、それくらい大変です。
B棟の方は、もう少し部材断面が小さい都市近郊型、これは関東から土を持っていって塗ってもらっている。A棟の方は京都の土で土壁を塗っていて、壁は結構強いだろうと言っていましたが、B棟の方は関東の土を使ったので、その変わり、貫がしっかり入っている。厚さ27ミリの貫が、5段入っている試験体です。
そのように壁の造り方が違っています。平面図をご覧いただくと解るように結構、壁が多いですが、これは壁の倍率を1・5として、基準法で壁量をぎりぎり満たすくらいに、壁を入れるとそのくらいです。

 加振のスケジュールはBCJレベル2を梁間方向(長辺方向)・桁行方向(短辺方向)と順番に入れて、最後にJMA神戸の三次元で揺らす、というものでした。結構な破壊はしましたが、これで決定的な破壊には至らなかったので、もっと壊そうという話になり、B棟については、JMA神戸をもう一回入れ、 A棟については、最後にJR鷹取を入れました。ご存知のようにJR鷹取を入れた段階で倒壊という結果になったわけです。
B棟のJMA神戸を入れたときの揺れ方です。
プランを見ても解りますが、結構、偏芯していて、偏心率が0・3くらいありますので、ねじれが出ているのが解ると思います。
A棟の方です。やはりねじれがだいぶ出ています。プランはほとんどB棟と一緒なんですが、A棟のは京間でモジュールが大きいので、B棟に比べて、建物が一回り大きいんです。そうすると壁の長さもその分だけ長くなるので壁も強くなりますが、重量は寸法の2乗か3乗で大きくなりますし、モジュールが大きくなった分、高さ方向にも高くなっていますので、建物重量が重いんです。そういうこともあって、A棟の損傷が大きかったということがあります。

 最後破壊をしたのを、表側から撮った映像です。電気が途中で切れたのは、別に大地震を模している訳ではなくて、ちょうどブレーカーに落ちた土壁が当たってブレーカーが落ちたっていう話ですが、何かちょっとあまりにも生々しいので気になりますね。

 A棟はJR鷹取で実質的に倒壊しました。その段階で通し柱は床のレベル、それから差し鴨居のレベルでその取り付く柱が、基本は全部折れているという破壊でした。垂れ壁はあまり損傷が無くて、まだ、どういう破壊になるかを、計算で細かくチェックはしていないですが、垂れ壁はわりあい健全で残り、柱が折れるモードでした。

 JR鷹取はA棟最後に入れましたが、もともとは入れる予定は無くて、BCJレベル2の後、JMA神戸を3軸で入れて終わるはずでした。その時点で、関係者が集まり、どうしようかという話をして、揺らすことにしました。何で揺らそうかということになりましたが、JMA神戸をもう一回入れても多分、本当の倒壊までは行かないので、では逆に倒せるような波は何だろうという話になりました。それは、JR鷹取か、中越地震の川口か、中越沖の柏崎かそのくらいだろうということで、JR鷹取になりました。

2009_0228_zu26.jpg
 図26:限界耐力計算手引きによる予測
     荷重/自重―変位

2009_0228_zu27-1.jpg
 図27:限界耐力計算手引きによる予測と応答スペクトル(JMA神戸)
     荷重/自重―変位

2009_0228_zu27-2.jpg
 図28:限界耐力計算手引きによる予測と応答スペクトル(BCJレベル2)
     荷重/自重―変位

2009_0228_zu27-3.jpg
 図29:限界耐力計算手引きによる予測と応答スペクトル(JR鷹取)
     荷重/自重―変位
 A棟・B棟それぞれ予備解析をした話をしましたが、シンプルに解いた時の話をちょっとだけして、終わりにしたいと思います。
 7月くらいの段階で、だいたいプランが出来たところで、私の方で土壁だけを拾って、(こういう建物は、ほとんど土壁で決まると私は思っているので)耐震診断のカーブ、あるいは住木センターから出ている、限界耐力計算のマニュアルのカーブを足し算して、建物の性能がどのくらいになるかを計算しました。その結果がこちらです。これは限界耐力計算の手引きで出した時で、A棟の1階の力と変形の関係です。だいたい自重の50%に近い水平力までは、最大耐力で出る。という計算結果です。伝統木造としては結構強いです。建物の性能がどのくらいになるかのカーブに、限界耐力計算の元になっている等価線形化法で応答予測をやる時の、地震波の応答スペクトルを書き足しています。このカーブはJMA神戸を表しています。

 応答スペクトルというのは、建物が、まだ損傷していない元気なままの状態(建物が弾性域にある)で揺れる場合に、建物の固有周期(1秒間に何回揺れるか)が決まれば、ある地震波で揺らしたとき、どのくらいの応答が出るかが、1対1で決まるので、固有周期を変えて得られた応答を、ずっとプロットしたものです。
応答スペクトルは加速度・速度・変位のそれぞれでどのくらいの応答が出るかという計算が出来ますが、使っているのは縦軸に加速度の応答スペクトル、横軸に変位の応答スペクトルをプロットしたもので、線によって減衰が違います(5%〜25%:曲がりくねっている内側の線が25%)。
結果として、スペクトルを表しているカーブと、建物の力と変形を表しているこのカーブの交点が応答の予測点になる、というのが等価線形化法の考え方で、それが限界耐力計算の元になっています。これは限界耐力計算と似たようなことをやって、応答の予測値を出しています。このグラフは建物の性能の計算値とJMA神戸の波とを一緒に表しています。建物の計算値と地震波がまだ交わっていませんがこのまま建物の線がのびていけば、地震波に当たります。建物の変形が進んでいくと、20%〜25%の減衰になりますが、このくねくねの一番内側の線(減衰率25%を示す)とか、内側から2番目の線(減衰率20%を示す)に当たったあたりが応答予測値になります。減衰率20%の線で交わるとしたら、25pくらいまで、応答が出るだろうという予測が出来ます。実験結果もだいたいその位でした。JMA神戸の波というのは、最大耐力が1割、2割上がってもだいたい20p前後に応答が納まるんです。だから私の、予想が正しかったというのはあんまり胸を張って言える事ではなく、自重の0.2〜0.3くらいを残して揺れたとすると、JMA神戸の波に対しては、25p、30p位の応答になる、そういう性質の地震波だということです。これは、簡易な応答予測なので、必ずしもこの通りになるとは限らないですが、だいたいそういう性質を持っていると思って間違いないです。

 それに対して、BCJレベル2を入れたらどうなるか。BCJレベル2の波というのは、応答スペクトルで書いてみると、神戸の波に比べると下の方に納まってくれます。神戸の波は基準法よりもはるかに強かったんですね。と言われるので、その通りですとも言いにくいのですが、やはりそうなんです。これは変形の小さい領域で交わってしまいますので、内側から3本目の線(減衰率15%)くらいが応答予測値と見てだいたい7〜8pの応答になると予測出来ます。これもほとんど合っていました。もし、耐力があまり上がらず、5〜10pの変形で地震波に交わることができないと、変形がずっと進んだところで地震波と交わる事になるので、BCJレベル2の波はかなり両極端に別れる波といえます。
このような等価線形化法の考え方を使うと、地震波の性質で、だいたい応答がどのくらいまで出るなという、予想がつくんです。

 ではJR鷹取はどうでしょうか。これは、ものすごい波です。先の2つの波は横軸30pくらいまででしたが、それではぜんぜん納まらないので、60pくらいまで描いています。減衰25%(曲がりくねった一番内側の線)でも大きい波です。それに交わるためには、建物の計算値の線がこれ以上耐力が落ちないでずるずるずるっと行って、やっと50pあたりで交わる。だから試験体を倒すならJR鷹取波を入れたら確実に倒れるということになりました。2年後に、もう一度振動実験をやるチャンスがあるということなので、なんとか倒れないやつを建てましょうという話も出ていますが、もしJR鷹取波を選んだとしたら、倒れないためには何をすればいいか。JR鷹取は変形の小さい時は0.8止まりなんです。だから耐力を自重の0.8くらいまでうんと上げてあげれば小さい変形で地震波に交わることが出来ます。

伝統木造は力で抵抗するのではなく、柔らかく地震を逃げればいいとおっしゃいますが、JR鷹取に勝とうと思ったら耐力を上げるしか手がないんです。そういう地震波なんです。それは建物がどうのこうのの話ではなくて、地震波の特性としてそういうものなんだということを、お話しておきたかった。いろいろお話をしました。これから質問の厳しい時間が待っていると思いますが、よろしくお願いいたします。

 <1>  <2>  <3>  <4>


posted by これ木連 at 17:11 | Comment(0) | 第1回勉強会(河合直人氏)報告 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。