2009年10月10日

第5回伝統構法を考える勉強会【拡大版】報告・・・パネルディスカッション(1)  2009.10.10

パネルディスカッション/伝統構法木造住宅の構造計画・構造設計
 ※木の建築フォラム機関紙「木の建築」25に掲載記事を再テキスト化したものです
   [投稿日 2009.12.05] 
   司 会:
パネラー:
後藤 正美(金沢工業大学 教授)
越海 興一(国土交通省住宅生産課木造住宅振興室長)
大橋 好光(東京都市大学 教授)
河合 直人((独)建築研究所 上席研究員)
鳥羽瀬公二(鳥羽瀬社寺建築代表、日本伝統建築技術保存会 副会長)
岩波 正(三和総合設計代表、 職人がつくる木の家ネット運営委員)
 

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後藤 伝統構法の設計法が、皆さんのご意見を伺いながらいいもの、普通に伝統構法の建物が建てられるようなものができたらいいと思っています。それぞれ自己紹介と今取り組んでいること、もしくは伝統構法にどんな思いがあるかということを説明いただき進めたいと思います。
  
【図1】越海 伝統構法につきましては、国交省として、その構造解析を進めていくための取り組みの下支えをさせていただいております。こういった場を通じて伝統構法に対する一般国民の理解と関係技術者の勉強が進めばということで、プロジェクトとしては残り1年余りあるわけですので精一杯やっていきたいと思います。

資料に、木造住宅と設計法(図1)という内容がございます。現在、建築基準法の体系の中で伝統構法という、まだ私の口からなかなか定義がしづらい木造の形態でございますが、在来工法との関係でどのような設計法があり、どのように法律上の処理をすればよいのかを簡単に整理をしたものです。そういった形で法律上の位置づけがうまく進めばと考えています。

大橋 今回の国交省補助による設計法作成の実施委員会の主査を仰せつかって担当しています。委員会で構造の専門家と必ずしも専門家でない実務者の間に入って、いろいろと苦労をしている役回りです。

河合 私のほうは最初に言いたいこと全部しゃべってしまいます。5分ということなのでそのエッセンスです。
【図2】建研で行ったもので、結果だけを簡単に申しますと、垂れ壁付き独立柱、柱が曲がることで耐えるものについてです。(図2)内法壁が付いているものの壊れ方や耐力というのは簡単な計算で予測可能なところまではきています。一方で、柱脚が滑るという実験もしています。これも時刻歴応答計算によってある程度予測が可能だというところまできています。

柱脚が滑る場合と滑らない場合を比べた結果は、この実験ですと滑る場合の方が損傷は小さい。ただし、これは条件があって、フラットなlmの礎石を使っている。建物の上物の耐力は自重の0.8倍ぐらいとかなり大きい。対称な配置で偏りがないから当然捻じれも無い。入力地震波はちよっと大きめのJMA神戸波を使っている。こういう条件の下での話です。

実験結果は、135角だと柱が折れて、150角だと壁が落ちましたというさっきの話です。柱脚の移動量は、ごく簡単なこんなモデルを使ってやったところ、青が実験結果、赤い点線が計算結果です。ずいぶんはずれていると思うかもしれませんが、動き出すタイミングですとか、下の方はかなり最大量も合っているという感じがします。こういった蓄積から設計法に向けていろいろな課題が出てきます。
伝統木造についても壁量計算のような簡易な耐震耐風設計が可能か。これについては、幾つかの条件のもとでそういうことも可能だろうと。柱脚の移動、浮き上がりがなくて、水平構面がある程度固められていて、耐力要素がバランスよく配置されるという条件だと、非常に単純に耐力壁や柱など全部を単純に足し算すれば建物の性能が予測できるものになります。資料には、そういう場合の設計法の素案を 上げています。いろいろご意見をいただいて改善していくたたき台です。ただ、これだと水平構面が柔らかいとダメなのかとか、柱脚がちょっとでも浮き上がったらダメなのか。今の在来軸組み構法はそういう考え方でできています。水平構面は必ずしもそうではありませんけれど。

さらにそこに、柱脚の浮き上がりによる耐力が低下するわけですが、そういうものを入れ込もうとすると簡単な係数にそれを落とし込めるのかという話になります。あるいは、水平構面が柔らかい場合、なおかつ簡易に設計をしたい。それが出来るのか。言うは易し、ですね。
先はどの柱一本あたりの耐力というのはこうぃう形であらかじめ計算をしてあげて、今の壁量計算で壁を加えていくのと同じように、柱一本あたりの耐力というものを加算していくやり方ができるだろうと思っています。

それから、現状と同じように限界耐力計算という道があり、設計法ではこの二通りを考えている。限界耐力計算についても、建物の条件によって、簡単なものから難しいものまでいろいろあってもいいという態度です。鉛直構面の荷重変形というのも、壁や柱とかの要素について荷重変形があらかじめ与えられていて、そういうものはカーブの足し合わせでいいだろうというのが一つあります。これは関西版のマニュアルと同じような考えですが、元はといえば、文化庁の耐震診断マニュアルも同じようなものなんです。ただ、そこではちゃんと評価できないもの、きちんと接合部の回転剛性など実験データに基づいてやりたい場合は、細かくモデルを作って解析をすればよい。それから、建物全体も水平構面がわりあい固くて捻じれもしないというものであれば、単純な足し算でいいわけですから、鉛直構面の荷重変形を全部足していけば、建物全体の力と変形の関係になります。

【図3】しかし、捻じれてしまうようなものについては結果が違ってきますから、捻じれを考慮して加算するような、それも比較的簡単な方法がないかを考えているわけです。さらに、水平構面が柔らかいと擬似3次元的なモデルをきちんとやるのであれば考えざるをえない。さらに、足元が滑ったり、浮き上がったりということを考えたら、部材レべルで3次元で解かないときちんとしたところは出てきません。
逆に、それを何か簡単な方法で予測できるようにすると思ったらそれについてのあらかじめどうなるかのシミュレーションを無数にやっておいて、こういうふうに考えれば大丈夫だという線を出さなければいけないわけです。ということで比較的簡単な3次元的なモデル、これぐらいだとパソコンのエクセル上で動くぐらいのソフトで十分に対応できるというのが私の今の考えです。(図3)

【図4】柱脚の滑りを許容する設計法については、柱脚の滑り量は、時刻歴応答計算ならある程度予想は可能です。私の解析では上下動はまだ考慮していないのですけれど、それも入れながらやっていけばできるだろうと思います。ただし、建物がそれで予測できるのは前提条件があって、柱脚が連結されている。それから各構面で一体となって滑っている。
そういう話です。ですから、その条件が崩れてしまった場合には、構面ごとにばらばらに動く可能性があったら、それは構面ごとに動くようなモデルを作って解かないと正確な予測はできません。
足がばらばらに動いてしまい壊れた町屋の事例です。(図4)この地震では南北方向に入力があったんですけれど、妻面の壁は固く、滑りやすいので滑る。
一つ内側の通り庭を挟んだ内側の構面は柔らかく滑らないため、構面が平行四辺形に崩れてしまい、結果として柱は折れるという被害になってしまった。

【図5】柱脚の滑りと軸組みの変形について、ある程度計算が出来ることがわかりましたので(図5)に示しました。建物の強さと摩擦係数は、たまたま0.3と0.4でやっています。鈴木先生は0.35とおっしゃいましたが、だいたい同じぐらいの数字になっています。滑らない場合は、摩擦10で絶対に滑らない。これは足元留めているのと一緒です。
その三種類で入力時振動も基準法レベルの波とJMA神戸波と二つを入れてやってみました。建物強さ0.2とか0.3という強さのものだと摩擦係数が0.3でも0.4でも滑らなくて、結局それは足元を留めた場合と同じことになって、建物の傾きは1/15のを超えてしまい設計上はアウト。建物強さが0.4以上あれば、摩擦係数0.3の時は滑り始めます。少しだけ上の応答は小さくなりますけれども留めてあっても174oで納まり、傾き1/15以下に納まっていますので設計上は一応セーフ。以下、建物強さが強くなればセーフです。基準法レべルの入力を考えた場合には、軸組みが安全であるためには、柱脚が滑る仕様であっても建物強さは0.4程度は必要。逆に、建物強さ0.4程度あれば柱脚を留めてあっても軸組みは安全限界を超えない。神戸の入力もありますが、それだとちょっと滑った方がいいねという結果にはなっています。まだ、試計算の段階です。

鳥羽瀬 大阪から来ました大工の鳥羽瀬です。文化財修理とかを通じて得た日本の技術を伝えていくのが僕らの仕事だと思ってますんで、それを新築に活かそうと、普段からやてっているわけなんです。けれど、皆さんご存知のように2000年まで我々はゆうたら犯罪者だったわけですわ。

良心に従い強い建物をつくろうとすると、違反建築になり、図面だけごまかして、実際はボルト入れんかったりとか、完了検査受けずに逃げて帰ってきたりとか。いろんなことをして怒られたりしましたけれど。やっと、この限界耐力計算というものが出てきまして、仕様規定に合わないものも性能で建てられるということで、やっと出来るようになりました。でもまた、ご存知の姉歯さんのおかげで1/15が1/30まできつくなりまして、土壁の少ないものなどは新築でも制震金物をつけなければきつい状態です。幸いにしてこういうことを国が企画してくださいまして、我々も参加させてもらっているんですけれど、木造の柔な変形能力を認め、伝統を残す良い方向に動いていって欲しいんです。

建築基準法が仕様規定でしか認めてこなかったという弊害、その影響が我々職人の中にもだいぶあると思います。考え違いしている若い大工さんもいてるみたいですし。本当の伝統というか、そういうものを知っている人というのは70歳以上になってしまったり。また、その人がやっているのが、本当の伝統かというとまたちょっと違うようなものもあったりするんですけれど。そういうものも含めたいい設計法を作ってもらえるんじゃないかなあと期待はしているんです。ただ、今のところどうなのかなという感じもします。

僕らの感覚的なもの。千何百年も続いてきているもの。奈良なんか地震が無かったのか。何回も大きな地震を受けているらしいです。それでも残っているということも考えていただきたい。今の科学で全部が分かるのか、それもちょっと疑問に思うんです。分からないから文化財は適用の除外になっているんです。現行の仕様規定だと、日本の国宝とかみんな違法なんですよね。あれを学んで何か造ろうとするとこれも違法になるわけです。そういうおかしなことは、ちょっとやめていただきたい。そう思っております。

後藤 次は岩波さんです。一ケ月ほど前にも立命館で同じようなフォーラムがありましたので、今日の資科にもありますが、少しその報告も兼ねて自己紹介をお願いします。

岩波 滋賀県の大津市からやってきました岩波です。日ごろ木造住宅の設計をやっています。伝統構法というばかりでなくて、筋違いを使った建物の設計もやっています。お偉い先生方がたくさんいらっしゃる中で今日は失礼な話をしてしまうかもしれませんけど、実務者の代表としてみんなの言いたいことを背中に乗せていますので、ご容赦いただきたいと思っています。先はどの腰原先生の最後のまとめに尽きるんかなあと私は思いました。伝統構法を守るために安全を犠牲にするのか、それとも耐震性を確保するために伝統文化を失っていいのか。本当はどちらでもないわけです。その間をねらわなあいかんということなんです。

私も伝統的構法の設計法の実験TTメンバーとして参加させていただいているんですけれども、そのあたりをいかに狙っていくかということでいろいろ頑張っています。
伝統構法の検証事業について、実務者のほうはちょっと違う方向に進んでいるのではないかなあと思っています。先ほどもありましたが、建築基準法が出来たときに伝統構法が置いていかれた。平成12年、性能規定ができて、鳥羽瀬さんが言われたように限界耐力計算などを使うと、筋違いを検査終わったら外すみたいな馬鹿なことをやらなくて済むんじゃないかと思えるようになりました。しかし、姉歯建築士が出てきて、ややこしくしたから適判送り。これでは少しまずいということで、国交省が伝統構法の検証事業をやってくれた。このとき実務者はすごくよかったなあということで、これ木連での第1回フォーラムでは「これから伝統構法が造り続けられるのか」ということをいろいろ言っていましたけれど、まあうまくいくんじゃないのかなと思ったりしました。しかし、この事業も半分の1年半程度経ち、どうもちょっと違うなあということを正直感じております。この検証事業は、昔からある伝統構法を救うこと。それから、適判送りになったことがまずいという二つをどうにかするのが目的ではなかったのか。そう考えると、今まで昔からあった建物の典型的な例っていうのが足元を留めない建物ということですのでそれをどうにか建て続けられるようにしなくてはならないということになります。

先はどから工学的に足元を留めないのはどういうことかというお話をされているわけなんですが、私たちからすれば、足元を留めないというのが伝統構法の特徴的なところでもあり、そこは考慮していただかなければいかんと思っているわけです。
3年間で足元を留める形で伝統構法の設計法が出されたときのその後の流れというものを先生方にはご理解いただいていないと思うんです。耐震偽装事件があって以来、建物の建築確認を出しても、なんでもかんでも重箱の隅をつつくような話が審査機関からされるわけです。何か問題があった時、分からんことは危ない方向に判断したらよいという風に扱われる現状を考えたとき、3年間でこれしか答えが出ませんでした、それ以外のものを特にダメといっているわけではありませんと言われても、答え以外のものはダメというように扱われるのは目に見えています。そう考えると、足元を留める建物はまだ検討中で今回では答えが出せませんという研究者の方々の答えを認めるわけにいかへんのです。3年間で出た答えイコール伝統構法、それ以外は認めませんよということになってしまうことを十分理解されていないと私は思っています。

住まいを造るということは、住まい手がおられて、大工さんにこんな家を建てたいんやと言われ、大工さんは、はいわかりました。こいうふうに建てましょうというのが基本です。それに対して、工務店はほっておくと悪いことしてあかんから、確認申請を出せ。確認申請を出すときに、どういうふうに審査したらいいか分からんから国に基準を作ってください。国に基準を作ってくれって言ったら、国もちょっとわからへんから研究者の方にじゃあどういうふうにしたらええのと聞くわけです。私らからゆうたら申し訳ないけど、家づくりに関して言えば研究者の方は黒子なわけです。だから、こういうふうにしたらどうや、ああいううふうにしたらどうやというアドバイスをいただくのはええんやけれども、伝統構法はこれでないといかんよとか、こうじゃないと危ないよ、それはダメです、などとあまりに制限をつけることをされるとやはり本末転倒なんじゃないかなと思ってます。

私どもは、実務者の意見をしっかり入れた形をベースとして設計法を作ってほしいということです。なんでもかんでもこれは安全やと言ってくださいと言うつもりはぜんぜん無いです。建てたいという人がベースになっていることを忘れておられるんじゃないのかなと思ってます。

【図6】関西フォーラム(図6)の話ですが、なぜ関西で行ったかと言うと、もう一回、伝統構法って何なんだ、伝統構法ってどういう良さがあって、どういうふうな意味があるんだ。やはり、良いところを活かして私たちはやっていかないかんということを確認したかったわけです。
たくさんの実務者が来ておられて、会場に向けて聞きました。「石場立てというものをどうお考えですか、足元を留めないということが伝統構法と違いますか?」と。ほとんど皆さんがそうですよというカードを上げてくれました。

そのフォーフムで、越海さんは、伝統構法の建物が適判の建物になるということについては、ちょっと想定外であった。大橋先生は、この3年間の事業では、足元を留めないという設計法というのはちょっと難しいので、そこまでは早急にできませんよというお話されました。
私たちは、石場立てにだけこだわっているわけではないですけど、各地にある伝統構法のおおよその共通点に近いんじゃないかということで、石場立ての建物、足元を留めない建物もどうにかしたいと思っているんです。それに対して、越海さんのほうからこのときに、実験する建物を皆さんで意見集約して提案できますかという投げかけをいただきました。私どもが言っていることはこの3年間で分かったことだけで設計法を絶対作らないで欲しいっていうことです。もちろん、設計法をつくるのが絶対ダメということではなくて、やっぱり、今分かっていることだけで作られるものっていうのは、全体が100あったらその1つぐらいなんだというふうに考えて欲しいわけです。地域によっても、人によってもいろんなやりかたがあるんです。

私は、伝統というのは、ある民族、社会、集団の中で思想、風俗、習慣、様式、技術、しきたりなど規範的なものとして古くから受け継がれたもの。これを伝統というんだと思います。いま伝統構法を新しくこうしたほうがいいんじゃないかというのはあくまでも新・伝統構法ということです。
それを別に否定しているわけではなくて、今までの良さを活かしてこういうのはどうですかという提案はいいと思うのですが、それが最優先しなければならないことではないと思うんです。

伝統構法をこの社会の中でわざわざ残していこうという事業なわけですから、ツーバイフォーがあって、プレファブがあって、在来があって、じゃあ伝統構法も1つぐらい残せたらよいということではないと思うんですね。伝統構法の建物はやはり日本文化として残していかなあかんのやと、そのためにつくる委員会ですから、そういったことを十分踏まえて進めて欲しいと思っています。

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posted by これ木連 at 10:52 | Comment(0) | 第5回勉強会パネルディスカッション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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