2010年04月13日

第4回伝統構法を考える勉強会報告(3)・・・建築物において無視し得ないこと

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20090718kougi_26.jpg建築物の絶対に無視できない設計のルールですが。馬鹿みたいな話ですが、中身が完全に詰まった建築物はないですね。これでは使えないです。内部空間は絶対にないといけない。
また、開口部が無い建物もない。出入り口のない建物はたぶん使えない。若干例外があるのは宇宙船ぐらいのものです。宇宙船でも一時的には開けるんですけれど。飛んでいるときには完全に閉めてます。ということは、出入り口を開けるというのが建築家の重要な役割ですね。

  
20090718kougi_27.jpg 木材特性というのは二つの大きな特徴があります。一つはめり込みです。これを避けることはものすごく難しい。それから、割裂。これはものすごく簡単に起きてしまう現象です。単純に釘を打っただけでも割れてしまう。ということは、これで金物補強をするというのはものすごく大変なことです。金物補強しても壊れるものは壊れます。

大工さんたちは一生懸命割裂防止を考えている。どういう割裂なら許されるのかを必至に悩んでいます。ここが近すぎると柱を割ってしまう。これではホゾの先端が割れるかもしれない。建物やフレームを大きく全体で固めると、害が少ない。これは長押ですが、貫よりも長押の方がずっと信頼度は高い。

耐震性にはどんなに頑張ってもできないことがたくさんある。建築物が無垢の固体ではありえない。一定の空隙がある。めり込みゼロは絶対にできない。割裂の防止は大変難しい。補強にも限度がある。こういった限界の中で耐震性を考えなければいけないということになります。これを実際にやっているわけです。


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20090718kougi_30.jpgここで、少し視点を変えて、建築を離れて飛行機ではどうしているのかを考えてみましょう。飛行機は建築よりある意味でずっと簡単です。完全に閉じた系で
す。空中を飛んでいるわけですから、ボディは完全に閉じた輪になって、閉鎖系を作っている。閉鎖系のものは飛行機、自動車、列車などです。



入力の最大の外力は、操縦ルールで決めています。こういう降り方をしてはいけませんよとか、こういう離陸の仕方をしてはいけませんなどの離着陸ルールがあ
ります。これで最大入力が決るので設計ができるのです。

もう一つ、フェイルセーフの構造というのを用意しておく。エンジンが壊れたらどうするのか。単発機であるなら滑空という方法を必ず採れるようにしている。双発機であるなら尾翼やフラップ、回転数制御ということなども対応できるようにしておく。ガラスが壊れる。そうすると酸素マスク、あるいは急遽低空飛行などいろいろ考えている訳です。また、経年劣化はどうしても起きます。一定の経年劣化は想定して、それを組み替えていく仕組みを予め持っています。

フェイルセーフというものは、いろいろありますが、一つにはバックアップということがあります。主部材が破損しても後ろにサブの部材があって代役を果たすという仕組みです。これは人間の社会でも、議長がだめでも副議長が何とかしてくれるというような話です。
ロード・ロッピングというのは、亀裂が生まれるとそれによって緩みが生まれ、入力がそれ以上生まれなくなる。そういう仕組みはしばしば活用しています。逆に、これが無いと悲惨なことになります。
もう一つ、冗長性、リダンダンシーというものがあって、一部の重要機能が損傷しても全体で補って、壊滅を防ぐ。これが伝統構法でしばしば言われる総持ちの概念にあるいはなるかもしれません。
複数部材とし、単一部材とはしない。複数部材を組にして一部材として扱おうという考えです。例えば、電線を単芯の線とより線で考えたときに、より線のほうが簡単には折れないあるいは切れないということにも同じ概念として使われます。
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リダンダンシーとマルティプリケーションというのは相互に、内容的には重複しています。

飛行機の構造と建築の構造を比較しますと、飛行機の構造というのは完結した構造、閉鎖型の構造と言えます。建築は地盤に固定する。これは大きな違いです。
地盤に固定するがために完結しない、あるいはし難いですね。建築は開放系。原理的には、建築は地盤を全部解かないと建築は解けないということになります。
地盤の特性が全部分からないと建築も分からないという、非常につらい立場です。そうすると、厳密に言えば構造計算はできないということです。しかし、でき
ないけれど、工学的基盤というものを仮定して決めているわけです。実用的にはそうやっている訳です。仮定に基づく近似計算というのは、そのベースは工学的
基盤というものを使っているからで、地盤の基本です。
20090718kougi_33.jpg例えば、テーブルは安全だ。だから地震時に逃げ込めば良いとよく言いますが、これは本当だろうか。このテーブルは、重い天板から脚がキャンティレバーで下向きに出ている構造です。もし、この柱脚を固定してしまうと、そんなに安全とはいえないですね。完全に固定するとものすごく危険なものになる。固定しなくても柱脚ごとの摩擦係数に違いがあっても壊れてしまう。だからテーブルが安全というのは、プロポーションにもよりますが、このテーブルが重すぎた場合、脚が華奢すぎればやっぱりだめですね。

壊れ難いテーブルにするには、脚の下を繋ぐんです。一つの閉じた系として動くようにすることです。これが土台建築といわれる、土台あるいは地覆というものを重要視した基本的な原理です。

例えば、南大門でも地覆をまたいで通らなければいけませんね。あの地覆を切ってはいけないということをみんな信じているからです。脚が開いたら、簡単に股裂きで壊れてしまうわけです。
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posted by これ木連 at 11:49 | Comment(0) | 第4回勉強会(渡辺一正氏)報告 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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