2010年04月13日

第4回伝統構法を考える勉強会報告(5)・・・筋違は何故嫌われるか?

20090718kougi_51.jpg筋違いが大工さんたちに嫌われたのは何故か?
筋違いを知らないわけではないですね。仮設工事では使っていますが、本設では使っていない。それは、圧縮と引っ張りの双方に対する接合部をどうやって作ってよいかが解らない。片一方であればできるのですが、両方は難しい。うっかりやってしまうと母材が壊れてしまう。これが問題です。仕口が壊れてしまうと修理コストが高いものになってしまうし、母材にせん断破壊などが起きると致命的なダメージとなってしまいます。

筋違いを使うとなると全ての接合部、例えば土台と柱の引き抜きに耐えるように、桁と柱の引き抜きに耐えるように、全部補強していく必要がでてきます。筋違いを一つ入れるということは簡単なことではないですね。伝統的な建築に筋違いをポッと入れれば補強できるというのは基本的には間違いで、やってはいけないことです。
20090718kougi_52.jpgこれを普遍して少し眺めてみると、通し柱と管柱とを一対にして、胴差と鴨居とを一対に、あるいはこの図の場合には足固めと敷居を一対にしています。こういった構造が考えられるだろうと思います。

土台と足固め、あるいは通し柱と管柱の違いというのは、単純梁と連続梁の違いです。これらに同じ力で変形させてみます。こちらは連続梁で変形はちょっと減りますが、反対側も同時に変形してしまう。全体としては同じ力で変形のエネルギーは釣り合っている。2部材は挙動が違う。この挙動が違う部材をつないでやると、それだけで抵抗力が増します。

貫はめり込みだけでなくて距離固定により抵抗力を増す部材とも言えます。2つの部材の役割分担ということですが、連続梁は引き寄せ材としてあり、単純梁は突っ張り材としてあります。基本的には引っ張りと圧縮の2部材の組み合わせだと思います。この簡単な組み合わせでどう組んでいくのか。貫、あるいは長押の役割を見ると、2部材を繋ぎ、その変形を一致させる。変形量がどちらも同じになる。実際の構造計算でも一様にこのように計算しています。連続梁と単純梁では変形モードが微妙に異なりますから、単純に繋ぐだけでも全体としては剛性が上がることになります。

これを描いてみるとこうなります。縦貫というのはあまり使ったことはないかもしれませんが、普通はここに吊り木が入っています。吊り木は重要な役割を持っているのですね。真壁はこの間の充填材です。充填材は重要な役割を持っています。真壁は内側から部材を突っ張る働きをし、先ずは圧縮で次いでせん断、曲げで抵抗します。初期の剛性は非常に大きいですが、引張力に弱いのですぐ壊れてしまいます。この壊れることが実は重要です。

この先は理想的に進めばの話です。必ずしも普通は理想的にはなりません。例えば、壁の表面には漆喰の固い層があり、あれはパリンと剥がれる。表面ほど固い層を造っていく。あれは各層ごとにポンポンと外れるようになっていますね。原理だけで言うと。きちんとはうまくは行っていないのですが。ポンと外れるときに悲惨な倒れ方をしないように工夫すればたぶん良いと思います。今は、部屋を汚すとか掃除が大変だとかずいぶん嫌がられます。この土塗り壁の面白さは、いくら壊れても耐力がゼロにならないという粘り強い構造を持っていることです。
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20090718kougi_57.jpg 建物でどのような損傷だったらば許容できるだろうかという順序を細かく挙げてみました。   
一番最初に壊れるのはコーナー部。こういったところは壊れ易い。この四隅が壊れる。そういうところから壊れてくれるので仕口が壊れないで済んでいます。表面層からだんだん壊れてくれると良いのですが、実際にはそのようにならなくて、下地が割れ、全体が壊れる。それから、袖壁の貫が緩み、袖壁のひび割れが起こる。この辺の変形まできたときに、基礎と土台の入力リミッターが働くといいなという話です。それより先になると、通し柱、柱脚の浮き上がりが起きてくる。

軸組みを守るためには、壁が先に壊れるのが基本です。それがちゃんといかないと軸組みが先に壊れてしまう。だから、壁は弱くなければいけない。壁が強くてはいけないのです。なかなか難しいことですけれど。でも、梁が柱の際で折れれば建物にドミノ的な倒壊を生じてしまいます。梁が柱を折ってしまえば同じような危険を生じます。どこが壊れると困るのかということをきちんと見ることが重要です。

少し絵解きした例です。梁の端部が折れてしまうと、梁が荷重を支えられないわけですから建物が倒壊します。柱が折損してしまうとこれも同様で大変厳しい。柱で引き裂き、これは少し粘るんですが、けっして安全な状態ではない。また、修理が難しい。鼻栓の梁の先で割裂しますと、込み栓がひん曲がります。許されるのは込み栓が曲がるくらいです。込み栓を入れ替えればよい。これも鼻栓の先は拘束しているのでこれ以上開かないですから修理は可能なんです。最初の二つはドミノ的な展開をしてしまいますから具合が悪いのです。
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20090718kougi_61.jpg 先にも触れましたが、耐震というのは言葉通りには達成出来ないだろう。ただ、地震対策だけは考えたいということです。地盤の卓越周期と建物の固有周期の不一致を計画することが地震対策の基本です。これが一致すれば壊れます。

地盤は多数の層状の構造をしていて、いろいろな層で違う固有周期を持っている。どこで増幅して、どこで減衰するのかなかなか複雑です。表面で出てくるのはそれらの層の重なり合いの総和が出てきて、卓越周期という現象として生まれる。その卓越周期と卓越周期の間に建物の固有周期を置いてあげれば一致しなくなる。しかし、建物の初期の固有周期というのは、普通は居住性から決ってきます。建物にはそれなりの固さが要求されます。歩いてぐらぐら動くのでは堪えられない。居住性で決りますからそんなに柔らかくはできないのです。ただ、地盤の卓越周期よりは長周期側に設定できればその方が都合が良い。これができない地盤であれば、初期の固有周期を確保する部分が簡単に壊れるようにしておけば良い。簡単に壊れて、初期の損傷によって固有周期を大きく変えてしまって入力を緩和するというのが一種のヒューズ効果です。損傷に応じて建物の固有周期は長周期化します。長周期化し過ぎて次の卓越周期に一致してしまうと話はこんがらがってきます。その手前で止めなければいけないという難しさがあります。

入力リミッターと許容損傷限界とを調整する。これはラジオのチューニングとそう違わないくらい細かな操作です。そういう操作をやれるようにしておいたら良いという話です。 
現在、地盤の卓越周期は比較的簡単に常時微動計測という方法で判ります。費用もそれほどかからないですね。これによって卓越周期が判れば、建物の固有周期をいくらにすればよいかが計画できます。ただ、これは現場で調整する必要があります。 

いろいろな構造計画をしながら、どんな損傷が困るのか。ドミノ現象の引き金になるもの、人命に危害をストレートに及ぼすものは困ります。下の方にいけばどちらかと言えば望ましい損傷形態ということになります。上は避けて、下は許容しましょうという考えです。
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posted by これ木連 at 09:48 | Comment(0) | 第4回勉強会(渡辺一正氏)報告 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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