2010年12月06日

第5回[拡大]勉強会講演:鈴木祥之教授<2>

■伝統構法の課題と今後の展望
su-2009_1010_0066.jpgsu-2009_1010_0067.jpg

伝統構法における課題ということで、皆さんが注目されています柱脚の滑りについて少しお話します。

柱脚の滑りに関しては、力学的には有利だろう。だけど、滑ることによっていろいろな危険性もあるのではないかということです。解析的にどういった滑りがいつ発生し、どれぐらい滑るのかというところがなかなか難しい。現在、多くの方がこの問題に取り組んでいるところです。

su-2009_1010_0069.jpgsu-2009_1010_0070.jpg

伝統軸組で屋根の棟の向きの異なる2棟のEディフェンスで行った実験です。
足元は、足固めで礎石の上に柱脚が載っている、いわゆる石場立てです。

一番奥には全面壁、三方には小壁だけという大きな偏心率とした試験体です。前面部は壁がありませんので大きな変形をします。動画で足元が滑っているのをご覧いただけたと思います。

足元の滑り量ですが、前面部は建物が大きく変形しますので、それにつられる様なかたちで少し足元は動きますが、奥の壁の付いている構面が一番大きく動いています。

 
su-2009_1010_0072.jpg

平面的に足元が動いた軌跡を見ますと、だいたい20cmぐらい大きく動いています。

これは建物の桁レべルでの応答です。地震入力が建物に入って普通は増幅しますが、滑ることによって増幅がそれほどされていないというか、ほとんど同じぐらいの大きさになっています。

su-2009_1010_0073.jpg

こちらの試験体は柱脚の仕様の問題と水平構面の変形について力学的な問題を調べるために、土台仕様と足固め仕様の試験体2棟で、それぞれ、構面を柔なもの、剛なもの、その中間的なものとした3種類の実験を行っています。
そして、土台仕様で足元を留めつけたもの、足固め仕様で柱脚が留まっていないものを実験で較べました。
まず、実験をご覧いただきたいと思います。(動画)

su-2009_1010_0075.jpg動画を見ると、こちらも足元のところが大きく移動している様子が分かります。

この試験体も偏心率を大きく設定されています。壁のないX13構面の滑りはほとんど見られず、構面のせん断変形する揺れです。
全面壁のX1構面は大きな滑りを発生しながらも揺れているという状況です。

su-2009_1010_0077.jpg

では、摩擦係数はどれぐらいのなのかを、層のせん断力係数いう形で表現しますと、だいたい0.35ぐらいと今のところ推定できます。

壁のないX13構面は、ほとんど滑りは見られないのは、摩擦係数0.35を層のせん断力を上回っていないわけです。

su-2009_1010_0078.jpgsu-2009_1010_0079.jpg
 この図は、土台仕様と足固め仕様との比較です。土台仕様の方は非常に大きな変形になりますけれど、足固め仕様の方は変形が抑制されています。
 その代わり足元が滑りますよということです。滑ることによって上部に地震入力が伝わっていかないということで建物の応答が抑制されているのではないかということです
su-2009_1010_0081.jpg柱脚の滑りについて実物に近い大きな建物ですとなかなかきめ細かな実験はできませんので、シンプルな試験体による実験が行われています。
su-2009_1010_0082.jpg


豊田高専の山田先生の行った、柱脚の部分だけを取り上げた実験です。
プラス方向、マイナス方向で摩擦係数が違いますけれど、0.5〜0.3という値が得られています。

su-2009_1010_0083.jpg

su-2009_1010_0084.jpg

京都大学防災研究所の向坊先生たちがされた実験です。だいたい動的な摩擦係数としては0.35〜0.55ぐらい。平均的には0.47ぐらいという結果です。

このような軸組構面では、通常はせん断変形が卓越されるわけです。それに対して、足元が留めつけていないと滑りが起こります。さらに、ロッキングも起こりますということです。

su-2009_1010_0085.jpgsu-2009_1010_0086.jpg
ロッキング振動が卓越するような場合は歩くような大変おもしろい動きも見られます。
su-2009_1010_0087.jpg
su-2009_1010_0089.jpgsu-2009_1010_0090.jpg
 実際に鐘楼だとか似た形の建物などはこういう動きをするのではないかと思われます。 
 
su-2009_1010_0091.jpg

お手元の方に英文の資料を付けています。


このような軸組の解析をしようとすると、ロッキングの動き、滑りの動き、もともとあるせん断変形というものを組み合わせて解析をすることになります。解析が進めば

、ある程度柱脚の滑りを捕まえることができるのではないかと思っています。

静的な実験、動的な実験で、いろいろな摩擦係数が出てきましたが、整理してみますとのようになります。
静的摩擦は、実験のディテールによってはずいぶん変

わってきます。摩擦係数が見かけ上1を超えることもあります。

今、注目しているのは、動的な摩擦ですね。力学的には、静的な摩擦から動的な摩擦になってということなんですけれども、これからの耐震設計法というようなものを考えた場合に、動的な値が重要になるということです。図からは0.35からもう少し大きな値くらいが動的な摩擦係数ではなかろうかなと思っております。

su-2009_1010_0092.jpg



<1> <2> <3> <4> <5>


posted by これ木連 at 09:16 | Comment(0) | 第5回勉強会(鈴木祥之氏)報告 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。