2010年12月06日

第5回[拡大]勉強会講演:鈴木祥之教授<3>

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■建物の滑りに対する検討
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建物の滑りに対する検討ということで話題提供です。
建物を2階建てとします。足元の滑りの検討では、建物全体の重量が効いてきます。このせん断力に対する建物の総重量の比が、摩擦係数を超えれば滑るわけです。
ところが、設計上のベースシア係数と言っている場合、質点系にモデル化しています。その時のモデル化するための重量に1階の半分の重量を考慮していない。 
一方、摩擦に関しては全重量なんです。ここに重量の差があるわけです。

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建物全体の重量と振動系を構成する重量との比率は、1.2〜1.4ぐらいあります。設計上のベースシア係数を与える場合、たとえば摩擦係数に、重量の比を掛けて出た値までは設定しても足元は滑らないということになります。

例えば、重量比を1.3とすると、動的摩擦係数0.35ということで、0.455となります。設計用のベースシアとしてこの値までは使っても良いということになります。

在来工法ですと、こういう値は非常に大きな値で、耐力も剛性も大きな値を使っていますのでベースシア係数は上がっていきます。しかし、伝統構法に関しては、ベースシア係数を大きくするだけでなく、ある一定の値までで止めておく。そういう値に収まれば、先はどのように足元の滑りは生じないことがありえるだろうと。このような設計をすれば、足元を留めつけなくても設計できるのではないかという提案です。

su-2009_1010_0098.jpg先ほどの建物でいきますとベースシア係数がどの程度の値になっているかといいますと、桁行きと梁間では違いますが0.2〜0.6。実は大きなベースシア係数を持っている建物というのは比較的新しく建設された建物で、当時は壁量計算でやっていますので、ベースシア係数としては大きくなっています。

建設年代の古い伝統構法の建物ですとベースシア係数は小さな値となっています。従来から造られているような古い伝統構法の建物ですとベースシア係数はそれほど大きくはありませんので、そんなには滑らないだろうと言えます。

  
su-2009_1010_0099.jpg 実際に我々が調査して、足元が顕著に滑っている例として、これはお寺の事例ですが。妻面に柱が見えます、その柱脚は基礎から6cm〜7cm動いています。

 実は、この建物は妻面を含めて改修工事を行っています。妻面の全面壁をいじっているため、かなり大きな耐力であったと思います。そのため大きな滑りが生じたと思います。 
su-2009_1010_0100.jpg 鐘楼ですが、いかにも不安定な形をしていますが転倒することはなくて、柱脚がここに載っていたものがこれだけずれて、40cmぐらいずれています。
 釣鐘も竜頭のところが壊れて下に落ちています。このような鐘楼は、先ほど実験でご覧いただいたようにロッキングしながら、滑っていくというか、歩いていくような感じで礎石から落ちてという形で動いたんだろうと思います。

  
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柱脚の滑りに関しては、滑ることによって上部への入力が遮断されるという、力学的には非常に明快なわけです。そのため、建物の応答が抑制されることになります。

いわゆる水平構面のせん断耐力を上げると、それだけ大きなせん断力が働きますので、摩擦係数を上回って足元が滑ることになる。実際の現象としても起こるわけです。

あとは、どのくらい滑るのかということなんですね。

さきほどのような比較的小さな試験体を対象とすれば解析に載りますけれど、実際の建物ではなかなかそこまでの解析はいまのところ難しいということで、いろいろな方々が現在研究中ということです。滑り量に関しては課題かと思います。

これも一つのこれからの議論のきかっけになるかということで、あえて申し上げますけれど現在、足元を留め付けたいという方々がたくさんおられて、アンカーボルト等

で固定するというやり方、これは別にされてかまわないわけですけれど、これを伝統構法の木造住宅の柱脚の仕様というような形で、いわゆる仕様規定化する事に関しては慎重にやっていただきたい。
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posted by これ木連 at 08:03 | Comment(0) | 第5回勉強会(鈴木祥之氏)報告 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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