2010年12月07日

第5回[拡大]勉強会報告:腰原幹雄准教授<1>・・・地震に学ぶ伝統構法木造住宅の被害

  ※木の建築フォラム機関紙「木の建築」25に掲載記事を再テキスト化したものです。

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腰原幹雄氏 (東京大学生産技術研究所准教授)

               地震に学ぶ伝統構法木造住宅の被害

 
 ■地震による被害から何を学んできたのか
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 私たちは、本当に地震に学んでいるのだろうか、というところが実は正直なところです。
地震による木造住宅の被害写真です。
どれも同じように瓦屋根の建物が押しつぶされています。
1923年の関東大震災から2004年新潟県中越地震まで約80年間ありますが、昔の同じ建物がずうっと建っていたわけではありませんが、建て替えられていた建物でも同じような被害を受けています。
地震に学んでいるけれど、まだまだ学び足りないのか、それとも考えていることが違うのかなと思います。
1950年に建築基準法ができます。安全な木造住宅をどうやって設計していくのか。従来あったように、ただ造っていけばよいというのではなく、その当時に分かっていることで安全にできる方法を考えていこうというのが法の姿勢だったのではと思います。

法律は、地震に学びながら、その当時の耐震基準、あるいは考えていた外力では不十分であったことの見直しを繰り返してきた歴史があります。


関東大震災以降で見ると、これらが伝統構法の住宅かということはありますが、1920年代に建っていた木造住宅に甚大な被害が出ている。柱と横架材の接合部のところで柱が折れたことにより反対側で横架材が外れてしまう。地盤が悪いので足元が沈下している。

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他の地震でも、柱が差鴨居の下で折損しているなど、どの写真を見ても建物全体としては柱が折れる、層崩壊して屋根が建物全体を押しつぶしてしまうといった似た様な被害が見られます。

1923年から1930年、情報があまり普及していないといえる時代には、同じような建物が同じような被害を受けていたと言えるのではないかと思います。

大きい被害の写真などが記述や記録の中で大きく扱われますが、完全に壊れた建物からよりも、壊れた部分であったり、壊れかかったものから、その壊れ方を観察し、それへの対応方法を考えることが、壊れ方をコントロールすることにつながります。

先はどの鈴木先生の振動台実験は、それを人工的に行うものです。自分たちが想定したように壊れるのであれば、それは設計がうまくいったことになります。


伝統的木造住宅がどのように壊れるのかを理解してはじめて、接合部はどうしたらよいのか、足元を留めたら良いのか、留めないほうが良いのかという議論にしなければいけないと思います。


建物が一体で揺れるためには、建物の一体性を確保する。その役割をするのが、水平構面です。屋根や2階の床とかが歪まずに一体性が保たれて、建物が一つの塊となって揺れる。そのように揺れると仮定できれば、限界耐力計算のように、一つの串団子、一つの質点として建物を扱うことができます。

建物がばらばらに動く、あっちの壁とこっちの壁が別々に動くということになれば、それぞれに質点がある串団子になる。あるいは、質点と質点の問をどのように力が伝わるのか、この水平構面をきちっと評価する必要がでてくるわけです。今は、一つの塊として、一つの質点になるべく近いものにしておいた方が設計しやすいため、簡易な基準としてはそういうものが扱われています。

水平構面というときに面だけでなく、横架材の接合部も重要な役割を果たします。横架打には引っ張り力や圧縮力が働きます。

ところが、梁に対しては水平構面の役割としてあまり重要視されていません。屋根を支える、床を支えるなど鉛直荷重に対する検討は、今までも経験的にされますが、地震に対して、梁が引っ張られる、抜け出すということはほとんど想定されていないのです。


建て方で、込み栓や車知などを打ち込み、部材を寄
せ付けていくことが、引っ張り抵抗力として兼用されているわけです。しかし、それが不十分ですと、横架打が脱落してしまうことなどがありえます。

町家の水平構面の構成を見てみますと、真ん中にこうした吹き抜けがあるものが多くあります。

こうしたものも、構造的に一つの建物が、一つの塊で動くという仮定で考えると、吹き抜けは弱点になりやすくなります。前の塊と後ろの塊の間に力のやり取りをする水平構面がありませんから、こうした部分で横架打、あるいは柱に力が集中してしまう。

もちろん、吹き抜けがあったらまずいわけではなく、吹き抜けがあったならば、こうした力のやり取りをどうやって確保するのか。

あるいは、力のやり取りをしなくても、こちらの塊と後ろの塊で負担するバランスがよければ建物全体としては安全になるのかもしれない。このような伝統的構法でも昔のままで造ることは可能ですが、そのためには、詳細な検討が必要ということです。


柱脚にもいろいろな問題がありまして、特に、独立柱で、礎石の上にただ載せたもの。これが他の柱と比べて違う挙動をしているのが分かります。

礎石といっても、必ずしもきちっとした礎石の上に建っている建物ばかりではなく、そもそもが足元が動くということを想定している納まりであるのか、動くとしたらどういう礎石を作らなければいけないのかを地震から学ぶ必要があるように思います。
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posted by これ木連 at 18:25 | Comment(0) | 第5回勉強会(腰原幹雄氏)報告 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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